結論から。この2つは対立する別リーグではありません。 HEWC は FIM公認の世界選手権で、決められた8戦を戦って年間王者を決めます。 HEWR は2026年に始まった世界ランキングで、 大会の格付けに応じて点を配る仕組みです。
重要なのは、HEWR は HEWC の一戦にも点を出すという点です。 実際、Forza Orza や Hixpania は「HEWC の一戦」であると同時に「HEWR の Premier 大会」でもあります。 テニスに例えるなら、HEWC が特定のツアー、HEWR が ATP ランキングのような位置づけです。
| HEWC | HEWR | |
|---|---|---|
| 正式名称 | FIM Hard Enduro World Championship | Hard Enduro World Ranking |
| 何を決めるか | 年間王者(世界チャンピオン) | 選手の世界ランキング。タイトルではない |
| 始まった年 | 2021年(前身の WESS から昇格・改称) | 2026年 |
| 対象大会 | FIM が認定した8戦のみ | 登録・審査を通ったすべての大会。HEWC の一戦も含む |
| 点の配り方 | 選手権として各戦にポイントを配分 | 大会の格付け(4段階)ごとに上限点が変わる |
| 参加の性格 | FIM の認定が必要(閉じている) | 主催者が申請し、基準を満たせば入れる(開いている) |
HEWR は大会を4つのティアに分け、優勝者が得られる点数の上限を変えています。 格の高い大会で勝つほど、ランキングが大きく動く仕組みです。
| ティア | 優勝時の最大点 | ランキングに数える結果数 |
|---|---|---|
| Supreme | 2,000点 | すべての結果 |
| Premier | 1,200点 | 上位8戦まで |
| Masters | 500点 | 上位8戦まで |
| Challenger | 250点 | 上位8戦まで |
どのティアになるかは主催者の希望ではなく、実績で決まります。 トップ選手の出走状況(重み35%)を筆頭に、 参加者数、国際色、メディア露出、賞金、レース時間、観客数などが評価されます。
大会がエントリーするための最低条件は1つだけ明示されています。 コース設定がモトクロスやクラシックエンデューロと明確に区別できる、 技術的により難しいものであること。 そのうえで主催者が電子申請フォームを正しく記入し、必要書類を提出します。
世界各地のハードエンデューロを1つのシリーズにまとめる試みとして World Enduro Super Series(WESS) がスタートしました。 これが現在の世界選手権の直接の前身にあたります。
WESS が FIM の世界選手権ステータスを獲得し、 FIM Hard Enduro World Championship に改称されました。 ハードエンデューロという競技に正式な世界選手権が与えられたのは、このときが初めてです。
この初年度のカレンダーには、Erzbergrodeo と Romaniacs も名を連ねていました。 運営はオーストリア・ヴェルスの WESS Promotion GmbH が担っていました。
2025年2月28日、WESS Promotions がシリーズからの撤退を発表します。 メインスポンサーであった KTM を失ったことが理由でした。 これにより2025年シーズンは一時、開催そのものが危ぶまれる状況になります。
その後2025年4月24日、FIM は新しいプロモーターとして ProTouchGlobal を発表し、シリーズは継続されました。
この新体制のもとで行われる FIM世界選手権に、 Erzbergrodeo と Romaniacs は参加しないという判断を下します。 ハードエンデューロを代表する2大会が世界選手権の外に出たことで、 この決定はコミュニティに大きな議論を呼びました。
Erzbergrodeo の Karl Katoch 氏と Romaniacs の Martin Freinademetz 氏は、 国際的なハードエンデューロに別の物差しを持ち込むことを検討し始めます。 そして2026年から Hard Enduro World Ranking(HEWR) が動き出しました。
発端は世界選手権との対立でしたが、出来上がった仕組み自体は閉じたものではありません。 特定のプロモーターがシリーズを所有するのではなく、 選手・主催者・パートナーを対等な立場で1つにまとめることを掲げており、 基準を満たせば HEWC の一戦であっても対象になります。
2026年に入ってからは HEWR 側と HEWC 側の間で 「前向きな話し合い」が持たれたことが報じられており、 関係修復に向けた動きも出てきています。 この構図が今後も続くとは限りません。
本ページは各出典で報じられた事実をもとに、日本語で経緯を整理したものです。 記事本文の翻訳転載は行っていません。